Novel-Like

出発、頭丸めて

昼下がりの中央線快速東京行きの座席に腰かけて,僕は深くゆっくりと大きな溜め息をついた.人はなぜ溜め息をつくのだろう?暗澹たる思考は脳から染み出して喉を熱く苛みながら伝い,肺の底に泥のように重たい瘴気を充満させていく.新鮮な空気を送り込んで…

杏仁豆腐 with slight alcohol

1900hrs. 目覚めた僕はとても腹が減っていた. 最近の僕の食欲は常軌を逸していた.牛角食堂で,一回の食事で二食分食べたと言ったら,暴飲暴食・金と時間の浪費仲間のWでさえ「は?」と聞き返した程である. だが思い返してみると,アメフトサークルのYとつ…

Long Goodbye─シチズン・ホールディングス企業CM─

ここにはもういられないよと,時がつぶやいている── シチズン・ホールディングス

鎧兜とアイス・ココア

ラケットにガットが張り上がるまでの30分かそこらの間に朝食を済ませるため,僕は適当な店を探していた.「左か右に曲がれば,モス・バーガーがあったはずだ」と思って,僕は左に曲がってみたが,伸びをして先を見渡してもそれらしきものは見当たらなかった…

命日─午前四時のコンビニエンス・ストア─

午前四時.辺りには強風が吹き荒れていた.吹きすさぶ風は冷たく,路上には枯れた葉っぱが散らかっている.強風によって空はとても濃密に澄んでいた.リゲル,ベテルギウス,そしてシリウス.東京の空にも,時に星はくっきりと輝く.もう冬か,と僕は思った…

トーキョー・シーブリーズ

夜23時から6時間に渡る作業で,僕はあらかたの差し迫ったタスクを消化した.成果広告をサイトに実装するという作業は二時間ほどで終わってしまったが,その後の時間はまたもデザインだった.ほぼ0に等しい素材と曖昧な要求で,場合によっては2,3日でいくつも…

夜明け前

その日は焼き肉だった.僕の身体,特に背中は切実に肉を必要としていた.僕はハラミを生で喰らった. HUBで4,5杯カクテルとウイスキーを飲んだ後だったから,帰路についた僕はかなり酔っていた.そして無性に愛すべき屋上に行きたかった. まだ小さな雨粒が…

eripmav

僕の体は確実に恢復へと向かっているようだった.体温はずっと37度5分辺りを推移していた.それは事故の衝撃が,そのまま熱エネルギーとなって僕の体に残滓として残っているかのような印象を与えたが,もちろん違う.体が必死に身体の修復にあたっているのだ…

抜け落ちた11時間

僕が僕の人生における意味での認知を取り戻したのは,おそらく土曜日の昼前になってからのことだった.すべての認知は記憶の上に存立している.壊れた玩具のように医者に同じ事を繰り返し尋ねる事が出来たって,自分の力で用を足していたって,その記憶が余…

そして僕は43時間ぶりに自宅に帰って来たのだった

オフィスでの地獄のような43時間から解放された僕は,愛すべき窟たる僕の部屋に戻って来た.いくらリニューアルといってもこれは流石に理不尽じゃないのか?とか自分の放つ異臭とか、今月の収入は2倍くらいになりそうだな、とかそんな諸々のことは,これまた…

Virgin Flight〜YAMAHA TZR 250 3MA〜

彼女が僕のところにやってくるのは2日先ということになっていたのだが,手続きその他諸々が早めに済んだらしい.予定を前倒しして僕は彼女を迎えに行った. 彼女の後見人(保護者的立場、だ)と軽く交わす世間話もそぞろに,僕は彼女との会話を始めた.彼女は…