変人ホイホイ a.k.a. オレ
菓子パンと牛乳パックの入ったビニール袋を下げて,コンビニエンス・ストアから出ると,七十五は超えているだろうというおじいさんが声をかけて来た.そいつは僕が店に入る前から,道のガードレールに腰をかけて缶ビールをあおっていた.休日の昼下がりを退職して久しいおじいさんがどう過ごそうが僕の与り知る所ではないが,もちろん僕はいくばくかの警戒を滲ませながら対応した.
─おにいちゃん,メダカなんて知らないでしょう?
─(??もしかして昨今のメダカ外来種が在来種を脅かしている件について一つぶとうというのか?と考えながら)
えっと,知ってますけど。。
─そう?僕なんて何十年ぶりくらいに見たよ.
ほら,そこにいるんだけど.
そう言っておじいさんは,メダカに住み良い池など明らかに持たないであろう民家の軒先を指差した.
やれやれ,ビールというものは,それ程に強い覚醒作用を備えていただろうか?と考えながら,庭を覗き込むと,確かに小さな発泡スチロールの水たまり─と呼ぶのが適切な位容積だ─に泳ぐメダカの姿を認めた.
─やー僕,感動しちゃってね.こんな所でも飼えるんだなーと思ってね.
おじいさんは,やけにかわいい身振り手振りで話し始めた.
─空気とか入れなくても大丈夫なのかなと思って.
─それは水草が入ってるからですよ.
─??
─水草が酸素を出すから。。
─そ!?じゃあ僕も飼ってみようかと思うんだけれども,草を入れればいいの?
─ちゃんと日光を当てれば.水草が光合成をして酸素を出すから大丈夫だと思います.
おじいさんは少し困惑したような顔をして
─そっか…おにいさんは…ばけがくだ。。
─(あいにく情報科学です)
─それは葉っぱを切って入れればいいのかな.
─いえいえ,ちゃんと水の中で生きるような草じゃないと.
─それはどこに売ってるのかな?
─水槽とか売っている所に行けば,売ってると思いますよ.
そんなやり取りを済ませるとおじいさんはお礼を言った.
帰り道,今年僕に話しかけた「変な人」たちについて考えた.
駒込のサイゼリアで,突然同席を求め,「あなたー私の故郷の人にーとてもよく似ているんですねー」と言ったジャーナリストの韓国人.*1
入院後検査で病院でバイクに乗ろうとした矢先「おぅ!いいナンバーだな!!」と,僕に話しかけて来た,常にどこかキレ気味の,バイクの玄人気取りのおじさん.
去年だと,
「明日までに○百万作らなきゃいけない」と駒込のコインランドリーで話しかけてきたお兄さん*2と,
第一声が「おう!寒さで脚もチンコも攣っちまったか!」だった,70になるのに充実した性生活を送っているおじいさんに,同じ日に遭うなんてこともあった.
平均的に見て,知らない人から話しかけられる頻度が多いのか少ないのかは定かではないが,あるいは僕には何かしら話しかけやすそうな空気が纏われているのだろうかと考える僕の自転車の前からょぅι゙ょが走って逃げていった.